こっそり

書くことを忘れそうな気がして、さみしいので

俺たちが本当の兄弟じゃないなんて、知らなかったよな、お前は。
あいつは知らないしな。
知らせる必要もないかと思ったけど
でも、それだけじゃなかったのかもしれねぇな。
俺たちを見て眩しそうにするお前のその表情を見てると
つい『本当の』ってヤツに憧れたのかもしれねぇし。
まだまだちっちゃかったお前に
大人でも首を傾げかねない話をしてくなかったのかもしれないな。

いや、そうじゃねぇか。
「本当の」って信じきってるあいつの態度に安心してた。
何より最初に俺に懐いてくれた「他人」のお前が
俺をこれ以上ないくらい幸福な気分にしてくれた。
だから、俺は「特別」を持てたんだ、自分の中に。
お前たちがいなかったら、きっと出会う人間全部を拒絶した。
お前に会えなかったら、きっと会った人間全部、同じだけ好いた。
全部を先に嫌えば嫌われない。
全部を好きになればただ気楽。
どっちかの生き方、きっとしてた。

そんな、驚くな、サクヤ。
信じられないって顔がまさしくそいつだな。
生まれたことが間違いだったと言われ続けた。
存在自体があってはいけないってさ。
ちゃんとした意味はわからなくても、子どもには伝わるもんだよな、言葉の色も匂いみたいなもんも。
だから、全部を相手にしようと決めたけど。
それってつまりは本気はゼロってことだったかもしれねぇな。

悪い、サクヤ、もう言わないから。
俺は丸ごとお前が知ってる俺だから。
それにはぜってぇ、嘘はねぇから。
たださ
ただ･･･
子どもの俺に腹をくくらせてくれたお前ら2人
どんなに大事かって話だけだ。
だから、今、腹いっぱい食べさせたい。
それだけだ。